今回は、町田市にお住まいの石田様邸を訪問させて頂きました。 石田様のお宅は、重度の障害をお持ちの成人しているお嬢様がおられます。以前は団地生活が長く、5段の階段と駐車場までの10メートルの道のりを、50kg近いお嬢様をお母様が背負われてお出かけされていたそうです。
腰痛との闘いの中、介助の限界を感じ、 「居間から車へ、また車から居間への移乗が出来たら親子共々どんなに楽になるだろう」との発想から、バリアフリー住宅の建築を決意されたそうです。
「リビングの掃き出し窓から車にすぐ乗り移れるので、本当に楽です。腰痛もすっかり良くなってしまいました。」
お母様が、明るい笑顔でお話しくださいました。
門から玄関までは車イスでも移動が楽に出来るように、なだらかなスロープになっています。1階ベランダの手すりには、お嬢様が通所されている施設で作られた、お嬢様のお名前を入れた可愛らしい陶板が飾られていて、お母様の深い愛情を感じられました。
1階は、床全面をフローリング材でフラットにし、床暖房を設置することで、横ばいで移動するお嬢様の手足を冷やすことなく、自由にお部屋を移動できる工夫がされています。リビング中央には掘りゴタツがあります。
「テーブルだと椅子に座らせるのに抱きかかえないといけないので大変です。でも掘りゴタツなら自力で足を降ろして座れるので、大助かりです。」
お母様のアイデアで
「介助するにあたり、便座でそのままシャワーが使えたら どんなに楽になるだろう」
との発想から、浴室とトイレは一体化になっています。浴槽は埋め込みにしたので、座った状態のまま楽に浴槽に入ることが出来ると、大変喜んでいらっしゃいました。
「寝室の窪んだスペースとクローゼットの中に洋服を収納する為の棚を作りました。引き出しだと何がどこにあるのか分からなくなってしまいますが、棚だと一目で着たい洋服が見つかるので本当に便利です。」
と大満足のご様子でした。
2階の一室は、ご家族の歴史が刻まれた写真(可愛らしいお孫さんの写真もありました)や、お母様のお仕事の功績の数々が記された表彰状等を展示する為のお 部屋“BA-BAギャラリー”になっています。お部屋の入口にも、可愛らしい陶板が掲げられ、まるで小さな資料館のようです。
石田様の要望が随所に盛り込まれたお住まいは、ご家族が障害を乗り越えて 快適にお過ごし頂ける、オリジナリティー溢れる設計となっています。
また、「BA-BAギャラリー」の遊び心溢れる楽しいお部屋からもお分かりいただけるように、 石田様のご家族を思う気持ちが、こんなにも素晴らしい「バリアフリー住宅」という形になって、 表れていました。 石田様、ご協力頂き本当にありがとうございました。